2003年の建築基準法の改正によって、家の中の空気を自動的に循環させて入れ替える24時間換気が義務化されました。
高気密の住宅が増えてきて、二酸化炭素濃度の上昇や、シックハウス症候群の予防の観点から、法改正後の住宅には全て導入されています。
2時間に1回、空気が入れ替わる換気システムなどの導入で、家の中の大量の空気が外に出て、外の空気が家の中に入ってきます。
そこで気になるのが、室内の温度です。
例えば夏の場合は、エアコンで室温を調整しても、換気システムによって空気の入れ替えと共に、家の中のエアコンで冷やされた空気を排出してしまいます。
さらには、外から暑い空気を室内に取り込むことにもなります。
高気密・高断熱の家でも、換気システムによって、室温が安定しないで、エアコンなどの消費電力も高くなってしまいます。
冬の場合でも同様に、寒い空気を取り入れて、暖かい空気を排出してしまい、快適な室温が維持できない事になります。
熱交換器なし
そこで、従来の換気システムの弱点をカバーするために、熱交換器が開発されました。
熱交換器は、新鮮な外の空気を室温に近づけて給気するため、冷房や暖房機器で快適に保たれている室温を損なうことなく家中の空気を入れ替える事が出来ます。
熱交換器あり
熱交換器は、室内の暖かい空気を排気する際に、屋外から給気する空気に熱を移して取り入れる仕組みになっています。
これは、給気と排気の両方を機械で行う第1種換気にあたります。第2種換気や第3種換気などでは熱交換器はありません。
熱交換器の種類
熱交換器には、全熱交換器と顕熱交換機があります。
全熱交換器は、温度と湿度(潜熱)を交換できるので全熱交換器。
一方、温度だけを交換するのが顕熱交換機。となっています。
熱には顕熱と潜熱の2種類があり、
顕熱とは…温度変化を伴う熱(物の温度を変える熱)
潜熱とは…温度変化を伴わない熱(物の状態を変える熱)
熱の種類によって、熱を加え続けても、物の状態を変えるのにエネルギーを使い、温度変化を伴わない熱もあります。
例えば、水の温度変化で見てみると、水に熱を加えていくと、どんどん温度が上がっていきます。
このように温度変化が見られる熱を顕熱と言います。
一方で、水が100℃になると、水は水蒸気になり全て蒸発するまで温度は上がりません。
反対に、温度を下げていくと、0℃で氷になり水が全て氷になるまで温度は下がりません。
このように物質が固体から液体、液体から気体、固体から気体、あるいはそれらの逆方向へ状態変化する際に必要とする「温度変化を伴わない熱」を「潜熱」と言います。
人間が感じる暖かさや涼しさには、温度だけでは測れない湿度なども関係してきます。
例えば、ジメジメしていると気温以上に暑く感じたり、空気が乾燥していると寒く感じたりします。
全熱交換器では、熱交換エレメントを通過する空気から熱だけではなく湿度も吸収して、移し替える事が出来ます。
夏は、外の暑く湿った空気を給気する時に熱と湿度を吸収して、排気する空気が回収して屋外に排出します。それによって室内では快適な温度と湿度をキープします。
顕熱交換機では、熱だけを交換して、湿度や臭いは吸収せず排出します。湿度の高い所や、臭いがする所で使われます。
家を建てる場合は、全熱交換器が付いている換気システムを設置することで、快適な温度・湿度を維持する事が可能です。ただ、お風呂やトイレなどは換気のルートから外さなければなりません。
一方、顕熱交換機だと湿度は維持できませんが、お風呂やトイレなども換気システムで計画することが可能ですが、湿度の維持は出来ません。
熱交換器の選び方
快適な温度と湿度を維持できる全熱交換器が付いている換気システムを選んで、お風呂やトイレには換気用のファンを取り付ける事で、湿気や臭いが戻らなくできます。
全熱交換器の仕組み
全熱交換器は、どのように熱と湿度を排気から給気に移しているのでしょう。
それは、熱交換エレメントを空気が通る際に、熱や湿度を移動させる仕組みがあります。
全熱交換エレメント
全熱交換器の空気の入れ替えや熱の交換などを行う心臓部分に使われています。
全熱交換エレメントには、回転型と静止型の2種類があります。
回転型
機械装置の半分で外気を吸い込み、もう半分で室内の空気を排出。
その中にある回転式のローターを通過することで、ローター内部に取り込んだ熱や湿度を移動させます。
排気の際に、ローター内に蓄熱・畜湿され、ローターが回転することによって、給気側に移動して蓄熱・畜湿された部分が給気の空気と共に室内に放出されます。
静止型
熱交換素子と呼ばれる、紙などで出来たエレメントを通り温度や湿度を移し替えます。
熱交換素子は、断面が三角形のトンネルが、給気と排気で交互に何層にも重なっています。
紙などの素材で出来ているので、挟まれた上下の層の、熱や湿度を移し替えやすくなっています。
排気と給気の通り道が、交互にあって、熱や湿度が通りやすい素材で出来ているので、移し替えることが出来ます。
全熱交換システムまとめ
換気をする場合、外の空気の温度や湿度が、室内の環境に大きく影響します。
夏は、暑い空気と共に、ジメジメした空気が室内に入ってきます。さらには、室内の涼しい空気は排出されてしまい、室温は安定しません。
冬は逆に、冷たく乾燥した空気が入り、暖かい空気を排出してしまいます。
その結果、より冷暖房を強く稼働させてしまいます。
そんな場合に、全熱交換システムを使えば、外からの新鮮な空気に、室内の空気の熱や湿度を交換することで、冷やしたり温めたりでき、エアコンの負担を減らし省エネにもなります。
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